山口 美央子(やまぐち みおこ、1959年3月22日 - )は、東京都出身のシンガーソングライター、作曲家。1980年からシンガーソングライターとして6枚のシングル?4枚のオリジナルアルバム?1枚のベストアルバムを発売したほか、1980年代後半からは職業作曲家としても活動しており、多くのアーティストに楽曲を提供している。
目次
1 来歴?人物
2 作品
2.1 シングル
2.2 アルバム
3 楽曲提供
4 脚注
5 外部リンク
来歴?人物
1980年にキャニオン?レコードからアルバム『夢飛行』でデビュー。シンセサイザーの音色にマッチする彼女の歌声から「シンセの歌姫」と言われた[1]。自身もYMOから大きく影響を受け[1]、既にこの頃からシンセサイザーを多用した曲作りをしていた縁で、今もビジネスパートナーである松武秀樹と関わりを持つようになる[1]。
その後、松武とともに、オリジナルアルバム『Nirvana』『月姫』と数枚のシングルおよびベストアルバムを制作し[1]リリース。このうち1983年リリースのシングル『恋は春感(しゅんかん)』は、コーセーのイメージ?ソングに選ばれた。
初期から海外でも高く評価されており、アルバム『月姫』に収録された「白昼夢」は海外メディアにもジャパニーズ?アンビエント?ポップスの傑作として取り上げられた[2]。
1980年代後半からはシンガーソングライターとしての活動は一時休止して職業作曲家に専従し、CoCoや今井美樹など多くのアーティストへ楽曲を提供した。
その後、1980年代の日本で作られたシティ?ポップが平成末期にYouTubeを始めとした動画共有サービスを通じて海外から発掘され、シティ?ポップが世界的に再評価された流れで山口美央子も再評価されるようになり、2017年12月、アルバム『夢飛行』『Nirvana』『月姫』が初のCD化を果たす。実際にそれ以前から松武のFacebookには海外のファンから「山口のCDが欲しい」という問い合わせが多数あったものの、「(CDは)ない」と回答すると「絶対出してほしい」という声も寄せられたため、松武が自ら原盤会社に直接掛け合い[1]、山口のオリジナルアルバムが再び陽の目を見るようになった。
2018年3月15日の読売新聞夕刊にインタビュー記事が掲載され、4月にはベストアルバム『ANJU』に収録されていた新曲「恋するバタフライ」「ANJU」の2曲がシングルカットされ初のCD化(アナログレコード盤も同時発売)、そして11月には公式サイト?公式ツイッター?YouTube公式チャンネルがそれぞれオープンする。過去のアルバムをCD化した流れで、松武が山口に新作を制作するようアドバイスしたことで[1]、12月に松武のレーベルであるpinewavesより35年ぶりとなる新作アルバム「トキサカシマ」を発売し、シンガーソングライターとしての活動を再開した。
2019年には4月に京都と東京で、松武とともに、本人曰く「久しぶり」のミニライブを実施。
作品
シングル
『夢飛行』(1980年)
『東京LOVER』(1981年)
佐藤準編曲のシングル?バージョン。
『夏』?(1982年)
『恋は春感』?(1983年2月5日)
コーセー'83春のキャンペーン イメージ?ソング。オリコンシングルチャート最高22位、売上枚数7.2万枚。
『さても天晴 夢桜』?(1983年)
『恋するバタフライ/ANJU』(2018年)
ベストアルバム『ANJU』に収録された新曲をシングルカット。CD、レコード同時発売。
アルバム
『夢飛行』(1980年11月)
収録曲「東京LOVER」は井上鑑編曲のアルバム?バージョン。
『Nirvana』(1981年7月)
『月姫』(1983年3月21日)
プロデューサー土屋昌巳、最高ランク64位、0.5万枚。
『ANJU』(1985年11月21日)
新曲「恋するバタフライ」「ANJU」を含むベストアルバム。
『トキサカシマ』(配信2018年12月19日、CDオンライン先行発売2018年12月22日?一般発売2019年1月23日)
35年ぶりの完全新作。CDでは「東京LOVER」シングル?バージョンも収録。
2018年12月にコンセプトを継承したニューアルバム発表!という衝撃。
JPOPS史上でも歴史的な名盤です。1983年発表。一言で言うとジャポネスク?アンビエント。作詞?作曲は全曲、山口美央子さん本人。独特のソングライティング力、ピアノの人です。初CD化にあたり、本人がライナーノーツを執筆。もう、有難過ぎます。
このアルバムの成功はやはり当時「一風堂」(一世風靡セピアじゃないですよ)で活躍していた土屋昌巳(アレンジ?サウンドプロデューサー)さんの存在でしょう。前2作が井上鑑さんのアレンジ?プロデュースで、名うてのバンドサウンドにエレクトロニックを乗せていたのに対して、このアルバムは本人のピアノ弾き語りにTR-808(ピコ太郎で世界的にリバイバルした通称やおや)を基本構成に、アンビエントなシンセを乗せることで、独特の世界観を見事に構築しています。
アルバムはソニー?六本木スタジオでの収録。プロデューサーは立川直樹さん。シンセのプログラムは前2作に引き続き「4人目のYMO」松武秀樹さん。この初CD化は松武秀樹さん45周年関連で企画されたものです。
マスターテープは当然アナログ。CD化にあたっては、スチューダーのA820で再生して96k/24bitで一旦収録、それをCD用にマスタリングしています。アンビエントな音場感が売りのアナログ盤よりも全体的に鮮明です。最近はワイヤレスヘッドフォンでも結構聞けるCDが多いのですが、これはワイヤレスヘッドフォンで聴くと、もう少しボーカルのツヤや生々しさが欲しくなり、AKGのQ701をオーディオアンプに繋げて聴いています。
1曲めの「夕顔 -あはれ-」は、冒頭の風鈴?風?夕立に続くピアノの美しいイントロに、TR-808と仙波清彦さんによる鹿威し風パーカッション。やはりボーカルがいい。ノンビブラートの語尾の浮遊感が絶妙です。そこからファルセット気味になる辺りが最高です。
「夏」。けだるく繰り返すメロディー。分厚い音。歌詞にも教養があった時代。
TR-808とピアノだけに歌が乗る「沈みゆく」はメロディーの切れ方が後の宇多田ヒカルを彷彿とさせる。ひらひらと艶のある歌声。無我の境地。
「鏡」。途中から入ってくるドラムとかもろ高橋幸宏さん。それに続く「白昼夢」まで、けだるく心地よい世界。
「月姫」は世界が変わって、ポップス狙い。土屋昌巳さんのギターソロもスパイスが効いています。
「さても天晴夢桜」はジャポネスクに戻る。メロディーがジャポネスクど真ん中。これをサラリと歌うところがすごい。
この中でベストトラックを選ぶとしたら、コンセプトで「夕顔」、叙情的なマスターピースの「沈みゆく」、ジャポネスクのど真ん中「さても天晴夢桜」で迷うのですが、やはり「沈みゆく」でしょう。シンセを多用したコンセプトアルバムの中で、全てを削ぎ落としたトラックがベストというのは、一見ちょっと違う感じがしますが、これらの楽曲の中でこそ、彼女のライティング?クオリティとボーカルとピアノがあらためて際立っています。
ラストトラックの「恋は春感」だけは、オリジナル発表時にCMタイアップ曲を無理やり突っ込んだので別扱いです。コンセプトアルバムとしては、本人が一番気に入っている「夏」のインストを入れるのが正解だそうなので、「恋は春感」を除いて最後に「夏」をリフレインしたプレイリストを作って聴いてみました。最高です。
「恋は春感」で好きなのは、アタックを優しく抑えたピアノです。
ちなみに「恋は春感」は1983年春のコーセー、「春咲小紅」は1981年春のカネボウ、「すみれSeptember Love」は1982年秋のカネボウ、「君に、胸キュン。」は1983年夏のカネボウ。コーセーじゃなくてカネボウなら吹いた風も違ったかもしれませんね。
とはいえ、これが現時点での歌手山口美央子の最後のオリジナル?アルバム。この才能、もったいなさすぎるだろう。